お久しぶりです。早速今回もとんがったゲームを紹介していきますよ。
本日ご紹介するのは美少女ゲーム界に夢を見た新規ブランドがほんの一筋残した軌跡、
『Angel Egg』(2004年6月25日/Windows98・2000・Me・XP)
「You&I 」のデビュー作にもかかわらず発売延期を繰り返したことで、いわゆる「見えてる地雷」扱いされていたタイトルです。ちなみに同ブランドの最終作にもなりました。
ざっと内容を説明すると、学園祭で演劇部が上演する劇の脚本を務めることになった主人公が、美少女部員たちや顧問の女教師と交流を深めていく話です。
学園ものとしてはよくあるお話ですね。主人公は学生兼小説家という設定ですが、珍しいというほどではないかな?
では、ごくごく普通のこの作品がなぜそこそこ話題になったのかというと、
この、無性にツッコみたくなる印象深さが理由でしょうか。
上の画像は私が勝手に「魅惑の曲線」と呼んでいる立ち絵です。正直言ってすごく好き。
どうですこの腰つき。人体ではありえない柔軟さにインド人もびっくりです。
こっちはこっちで呂布みたいな頭してますね。
これは以前『THE地雷エロゲー』という本で前田さんが語られていたことですが、美少女ゲーム(エロゲー)は他のジャンルに比べて参入の敷居が低いんですよね。それでも物によってはアニメ化やコミカライズ、果ては映画にまで進出を果たしたりもしているので、夢を見たくなる人々は後をたちません。
しかしながら、クリエイターの実力がその理想に及ぶかと言えば、そうとは限らないわけで……。
いや、でもまあ、『わくわく☆惑星プリンセス』に比べたらずっといいゲームですよね。
ちなみにこのゲームの問題は画力が足りていないことだけではありません。ちょっと下の画像を見てください。
この背景、作中では「ハリウッド映画に出るような豪華なプール」と言われているんですよ。
シナリオとの乖離が見られますよね……。
ホラー映画でどこかに閉じ込められる展開ならこの背景のようなプールが出てくることもあるかもしれませんが、どのみち豪華ではないですし。これでは市民プールとしてもかなりボロなほうではないでしょうか。それに水からCGっぽさが漂いすぎているのも気になります。
イベントCGでも上のような感じなので、豪華さはあまりないかな……? プール部分を描いていないから何とも言えませんが。というかこっちはこっちで白くなりすぎているのが気になります。
市民プールとシナリオに書いておけばよかったのではないかと思うんですけどね。こういうのを「雉も鳴かずば撃たれまい」と言うのでしょうか。
豪華というならこれくらい(↑)は描いて欲しいところです(別のゲームの画像です)。
このくらい(↑)なら「ベッドなっげぇーな!?」と思いつつスルーできるんですけどね(こちらも別のゲームの画像です)。この画像に関しては塗りのクオリティはいいですし、このゲームの内容には問題がないからスルー出来るのかもしれませんが。
いや、でもこれ改めて見ると本当にベッド長いですね。ラミアでも寝れそう。
『Angel Egg』に話を戻して、こちらはヒロインとお祭りに行ったときの画像です。一応言っておくと、これ、別に公園で待ち合わせてからお祭りに行くシーンというわけではないんです。出店のおっちゃんに話しかけられている描写もあるので、ここがれっきとしたお祭り会場なんです。
ここがお祭り会場なんです。
背景にツッコみどころがあるのは他のゲームでもたびたびあることですが、『Angel Egg』はちょっとひどいですね。
ちなみにイベントCGでは以下のように描かれています。
立ち絵とイベントCGでヒロインの顔が違うところも気になりますが、背景に関してはどうも「そもそも担当への発注をミスしているのではないか」という疑惑が浮上しますね……。
さて、ここまでは画力、絵とシナリオとの乖離について言及しましたが、ではシナリオに問題がないかといえばそうでもありません。
私の記憶違いでなければ、本作の主人公の家にはヒロインの1人である女教師が同居していたはず。もしくは記憶違いだったとしても家にちょいちょい上がってくる親しい関係のはずですが、あまり出てこず、主人公が家に独りでいる描写ばかりが毎日必ず入るんですよね。
……さて、ご飯を食べて、作業を開始だ。
…………もぐもぐ。
よし、やるぞ!
……カチカチ、カチカチ。
カチャチャチャ、チャチャ。
…………よし、終わったぞ!
……これ要る?
これは主人公が独りでご飯を食べて作業をするシーンなのですが、主人公が勤勉な人間だとプレイヤーに分かるよう描写するにしても、もうちょっとやりようがあるんじゃないかと。日付を進めるたびこのシーンを毎度見させられて嬉しいわけがないじゃないですか。
昔、ネットで流行った画像でこんな感じのがありましたね。独りの人が「おはよう 今日もいい天気だ 朝ごはんを食べよう」「パクパクモグモグ パクパクモグモグ 」とか言いながら泣いているやつなんですが、それを思い出しました。
主人公が小説を書くときに選択肢を選んで展開を変化させることもできますが、少なくともプレイした限りではゲームのストーリーにはまったく影響がありません。ますますこのシーンの意味がわかりませんね。
劇中劇が面白かったり、イベントCGを回収できるならこれでも構わないのですが、そういうわけでもないのでちょっと読んでいてつらいものがありました(劇中劇でCG回収できる例はソフトハウスキャラのゲームがそれにあたります)。
一応言っておくと、文章能力自体に難があるわけではないので切って捨てるほどではありませんよ。ただ、絵にも大まかなストーリーにも光るところがないので、シナリオには期待したかったなあと。
「学園祭を成功させる」というよくある話の目的が示されていることもあって、ギャルゲーやエロゲーをやる人ならYou&Iがどういうゲームを作りたかったのかがなんとなく雰囲気だけでもわかると思うのですが、実現させるには地力が足りなかったというのがプレイヤーにも伝わってきてしまうゲームでした。意欲は素晴らしいのですが、もったいないことです。
イベントCGはそれほど悪くないのでせっかくだから置いておきますね。
クオリティは極端に低いわけではないと思うのですが、本当にどうして立ち絵と雰囲気が違うのでしょう。ついでにどこかで見たような画風なのも気になります。
人気の絵師がいるとその画風を真似する方が続出しますが、なかなか藍より青しとはいかないわけで、正直なところ、似ているだけなら「タマ姉たまんねぇ!」とか言って本人が原画を描いているゲームに飛びつくものでしょう。絵の練習に好きな絵を真似て、そこから自分の絵柄を追求するならアリだと思いますが、商業でそれを売ってもそれほどウケないでしょうね。同人ならそれでいいのですが。
この天使のタマゴについてはもう、孵らなかったというべきか、ピータンができちゃったというべきか。
今回はかなり厳しいことを言いましたが、正直このゲームは嫌いじゃないです。本当に心からこの腰つきが好きですね。見ると笑顔になれますから。